まんがさんぽ　■かわいいあなた　（乙ひより）

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■かわいいあなた　（乙ひより）

★まんがデーター　［１３／１５］
・絵　　　：■■■■□
・話　　　：■■■■■
・独創性：■■■■□
・属性　：　百合・ラブコメ
・おまけ：　あとがき、カバー裏にキャラ表、
　　　　　　描き下ろし「ココロ弁当」
・その他：　初単行本、短編×６。
　　　　　　　　　　
本との出会いは一期一会、漫画もまたしかり。
本日紹介は「乙ひより」センセの「かわいいあなた」です。

えー、えろい漫画が続いたのでお口直しをば。
前の「夜空の王子と朝焼けの姫／袴田めら」紹介の時にて”迷っております”と逡巡していたこちらの単行本。
ついに手に入れました。
こないだは特にコレっていう本もなかったので…。

さて、こちらの「かわいいあなた」は「乙ひより」センセの初単行本です。
それと感じさせない安定した画力とバランスの良作品集。
なお、ちょっと↓表紙は寄りすぎでセールス的に損をしているのではないか、とか余計なこと思ったりしましたが、どうでしょう？

※左：「柴崎あかね」、右：「藤代まりあ」
　お姫様だの王子様だのってお話は百合漫画の定番ですねぇ。

そんな表紙二人のエピソード、表題にもなっている「かわいいあなた」
文化祭でグリム童話のマレーン姫をやることになり、王子役は多数決で「藤代まりあ」に決定しました。
すると、お姫様役には仲の良い「柴崎あかね」さんが立候補するのです。
そんな導入。

「悪気なく人を傷付ける程罪深いことってないと思うわ」

そんなことをしれっと言う「あかねさん」はふんわりと可愛らしい娘さんですが、実は独特のテンションと確固たる哲学を持った人。
一方の「まりあさん」は身長すらりと高く、多数決で王子様に選ばれるほどの格好良い容姿なんですが、逆にそれがコンプレックスで可愛いものに憧れる人なのでした。
そうした、彼女の内面を見て「可愛い」と言っている「あかねさん」
やりたくもないお姫様に立候補し、自らの衣装であるドレスを破った行為など、何の疑いもなく「まりあさん」のために実行してしまう行動力は確かに王子様ですね。
こうした、容姿と性格が正反対というのは、実際にもよくある話ではないでしょうか？

※ひでるお気に入りの一人「泉ちゃん」です。
　描き下ろしのエピソードのが良かったんですよぉ。

”私の好き人には好きな人がいます”、という言葉が切ない「冬色思い」
手芸部に入った主人公「静香」さんはややそれと似つかわしくない先輩「祭」さんにふと恋心を抱きました。
しかし、その「祭さん」は先輩「あや」さんのことが好きなのです。
…だいたいそんなお話。

百合連鎖なエピソードですね。
主要な登場人物が三人でも三角関係にはならず、それぞれが一方通行というのはこうしたネタの特徴でしょう。
百合漫画は”基本的に片思い”ですもんね。
…おそらく、ひでるさんはそんなんな恋愛模様が好きなのかもしれません。
わかんないけど。
振られたことを悟って、思わず「よかったですね」と言ってしまう「静香さん」、続いて「すみませんでした」と謝罪するシーンがいいですね。
その後、溜めていた感情を爆発させてしまうくだりも定番なんですが、身悶えるほどに恥ずいです。（※良かったという別表現ね）
なお、描き下ろしの「ココロ弁当」は先の主人公「静香さん」が再登場、ちょっと顔を見せていた友人「泉」ちゃんが主役になる、裏エピソードというべきお話。
ちゃんとお話がリンクしており、並べて読むとより深くお話が楽しめるようになっておりました。
また、ひでるさんはこういうのが好きなんですよ。ええ。
友人「泉ちゃん」は友情を一歩踏み出したような初々しい状態。
コロコロと表情を変える、コメディーちっくな彼女が見物です。
もし、これが本格的になったなら、先の百合連鎖がまたひとつ増えるんですねー。
ちょっとセンセの長編とかも読みたくなりました。

※「宮路エリカさん」です。
　外観で誤解されてしまう人ですね。合コンの描写が秀逸。

ほか、キスから始まる恋愛、みたいな「Ｍａｐｌｅ　ｌｏｖｅ」は「里中楓」「宮路エリカ」さん二人の独特な間が楽しいお話。
どれもじんわり染み込んでくるようなエピソード群で、派手さはありませんが傑作揃いでした。

やわらかな線のスッキリ絵。
白の比率が大きく、自由度の高いコマ割りなどが少女漫画ちっく。
丸い目とすこーんとあいた口、広めな輪郭が特徴で、嫌味ない人物絵です。
こうした百合漫画に慣れた方には問題ないでしょーが、そうでない一般の方は好みが分かれてしまうと思います。
冒頭でも書きましたが、全体の安定感・バランスは初単行本ではないくらいに抜群でした。
オススメします。